DNSSEC ジャパン 運用技術 WG
1. はじめに
1.1. 背景
2010年7月にルートゾーンでのDNSSECの運用が開始されて以来、各TLD運用組織でも本格的にDNSSEC導入が進んできている。一方で、先行して導入した組織においては、様々なDNSSECに関連する運用トラブルが発生している。DNSSECジャパン運用技術WGでは、先行導入組織における失敗事例を調査および考察することで、将来DNSSECを導入する組織に対しての知見とすべく、失敗事例情報をまとめた。なお、調査した失敗事例全体から総括した考察については、別資料にまとめているので参照されたい。
1.2. 注意事項
- 免責事項
- 問合せ先
本ドキュメントは保証されたものではない。下記Webサイトの免責事項を確認のうえ、本ドキュメントを使用して頂きたい。
http://dnssec.jp/?page_id=16
本ドキュメントに関する改善点などのコメントは下記事務局まで連絡いただきたい。
DNSSECジャパン事務局 <sec@dnssec.jp>
2. 失敗事例の紹介
以下の情報は2012年6月~2012年8月までに開催したWG会合において調査・考察した内容のサマリーである。失敗事例として調査した内容はこの会合日時以前に発生し、かつ公表されていた失敗事例を対象としている。このため、2012年8月以降に発生した事例については、ここでは対象としていない。
2.1. Jun/5/2010 arpa
- http://dnssec-deployment.org/pipermail/dnssec-deployment/2010-June/003872.html
- 署名有効期限切れ。
- 原因
- 教訓
- ISC DLVは署名の有効期限が切れると自動でDSを抜く。そして再度署名が有効になるとDSが復活する。
- 署名の有効期限はきっちり管理・把握してなくてはならない。
2.2. Oct/7/2010 be
- https://lists.dns-oarc.net/pipermail/dns-operations/2010-October/006166.html
- 署名有効期限切れ。
- 原因
- 教訓
- KSKは2つあったが片方だけしかDS登録してなかった。
- どのKSKから生成したDSを上位ゾーンに登録しているか把握しておく必要がある。
2.3. Sep/11/2011 uk
- http://blog.nominet.org.uk/tech/wp-content/uploads/2010/09/dnssec-incident-report.pdf
- 署名検証不能。HSM不具合。
- 原因
- 教訓
- 予備系との鍵同期に難があった中でハードウェア故障。
- TTLは長すぎると不幸。不幸があったときの連絡体制の確立。(DNS障害のため障害該当ドメインでのメールは機能しなくなる。)
2.4. Sep/16/2011 mozilla.org
- http://blog.mozilla.com/it/2010/09/16/mozilla-outage-report-mozilla-org-dnssec-09162010/
- 署名検証不能。
- 原因
- 教訓
- 手順ミス。DNSSEC対応まだ開始してないのに、先にDS登録してしまった。
- 手順書が必要。
2.5. Feb/12/2011 fr
- 原因
- 教訓
- HSM不具合とbindのバグ。
- 監視対象が適切ではなかったため検知できず。ゾーンの整合性確認もできるようにする必要がある。
- 障害時の連絡体制の確立が必要。
2.6. Feb/22/2011 kg
- http://dnssec-deployment.org/pipermail/dnssec-deployment/2011-February/004816.html
- 署名が未来の時間(+6時間)なので検証不能。
- 原因
- 教訓
- サーバの内部時計がローカルタイムに設定されていた。
- サーバのクロック設定はhwclock、dateのずれなど、セットアップ時に充分気をつけること。
2.7. e164.arpa, ripe.net, 0.a.2.ip6.arpa
- Mar/4/2011 e164.arpa
- Apr/14/2011 ripe.net & Apr/15/2011 0.a.2.ip6.arpa
- 原因
- 教訓
- Point of no returnの意識がない。
- アトミックにするべき処理を重ねて行った結果、システムの整合性が取れなくなった。
- https://lists.dns-oarc.net/pipermail/dns-operations/2011-March/006945.html
- https://lists.dns-oarc.net/pipermail/dns-operations/2011-April/007206.html
- KSKキーロールオーバーで不具合発生。
- サードパーティ製Proxyツールのbugが直接的な要因だが・・・。
- 外的な公開前に、内側でOne Step検証を踏む必要がある。
- システムの更正とDSのロールオーバーとを一緒にやった。一つずつ適時行うべきだった。
- ロールバックの手順がない。
以上
印刷用: (pdf形式, 720kB, 4p)